「雨中石山寺」4


 途中、シャガが至る所に咲いていた。

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 経蔵を過ぎた所に紫式部の供養塔と松尾芭蕉の句碑が並んでいる。

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あけぼのはまだむらさきにほととぎす 芭蕉
石山は東雲むらさきほととぎす uttiy m(_ _)m

 多宝塔正面の階段にさしかかると前に鐘楼が見える。

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 左に折れて上りかけたその階段で、妙なものを見つけた。
 階段は私の鬼門であるから手すりをしっかり握る。ほぼ下を向いたままの状態で上る。で、気づくことができたのだ。

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 それは石化したような木の根だった。あたかもコンクリートで階段を補強したかのようにぴったりと接着している。
 木のたおやかさ、したたかさ、うつくしさ。
 そして弱く、もろく、はかなく、……。
 顔を上げると多宝塔がある。
   
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 上りきってあらためて見上げる。雨の中に佇むインド象を連想した。

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 静かに濡れ、恵みを受けつつ巨木の森で雨が立ち去るのを辛抱強く待っている、もの言わぬ巨象。

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 大日如来を盗撮(?)した。

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 多宝塔の左奥には源頼朝と亀谷禅尼の供養塔が。

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 南西の隅にめかくし石。

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 だが、到底抱けるような大きさではない。

願いとは叶えられぬもの春の風 uttiy

 進路を東へ急ぐと芭蕉庵があるが閉まっていた。開いていればお茶を飲めるらしい。それと棟をつづけるようにして月見亭が…。

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 これはいい。中秋の名月にこの台の上でこころ通う人たちと語らうことができたらさぞ愉しかろう。僧侶も人の子、ここで観月する興趣を愛さずしてどうして釈尊の弟子と言えよう。ただ、だれがここで見たことか。

   名月や寺男も観てししの音 uttiy



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 私は心経堂を左に見ながら、紫式部展の豊浄殿(宝物館)まであとわずかの道のりを急いだ。雨脚がわずかに弱まったようだった。後いツツジがこれから咲こうとしていた。

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 やっと辿り着いた豊浄殿は大きくなかった。