座禅草
座禅草が大きいはずがないのに、小さいその群落に驚いた。
近くで、「かわいい」という小声で女性の嘆声がする。
しかし座禅草はあっちを向いたりそっちを向いたり、わがままな利かん坊のように、
はにかむ小娘のように、ほとんど私の方を向いてはくれない。想像してきた、あのア
ップの写真を撮ろうにもあまり撮れそうにない。かすかに落胆の音が聞こえてきそう
だった。足下を見ると、ここでも心ない人の足跡が柵の中にたくさん残っている。し
かも幾株もの座禅草が傷ましく踏み潰されている。杜若の平池でもそうだった。花を
いとおしむ人間のこころとはそんなものなのかと、怒りとともに〈自分はどれほどこ
ころないかなぁ〉と振り返ってみる。
わずかながらいくつかの顔がこちらを見ている。かわいいというより、不思議な感
じがする。確かに、岩窟で僧が一心に修行する光景に似ている。
近くで、「かわいい」という小声で女性の嘆声がする。
しかし座禅草はあっちを向いたりそっちを向いたり、わがままな利かん坊のように、
はにかむ小娘のように、ほとんど私の方を向いてはくれない。想像してきた、あのア
ップの写真を撮ろうにもあまり撮れそうにない。かすかに落胆の音が聞こえてきそう
だった。足下を見ると、ここでも心ない人の足跡が柵の中にたくさん残っている。し
かも幾株もの座禅草が傷ましく踏み潰されている。杜若の平池でもそうだった。花を
いとおしむ人間のこころとはそんなものなのかと、怒りとともに〈自分はどれほどこ
ころないかなぁ〉と振り返ってみる。
わずかながらいくつかの顔がこちらを見ている。かわいいというより、不思議な感
じがする。確かに、岩窟で僧が一心に修行する光景に似ている。