座禅草

イメージ 1

イメージ 2

 座禅草が大きいはずがないのに、小さいその群落に驚いた。

 近くで、「かわいい」という小声で女性の嘆声がする。

 しかし座禅草はあっちを向いたりそっちを向いたり、わがままな利かん坊のように、

はにかむ小娘のように、ほとんど私の方を向いてはくれない。想像してきた、あのア

ップの写真を撮ろうにもあまり撮れそうにない。かすかに落胆の音が聞こえてきそう

だった。足下を見ると、ここでも心ない人の足跡が柵の中にたくさん残っている。し

かも幾株もの座禅草が傷ましく踏み潰されている。杜若の平池でもそうだった。花を

いとおしむ人間のこころとはそんなものなのかと、怒りとともに〈自分はどれほどこ

ころないかなぁ〉と振り返ってみる。

 わずかながらいくつかの顔がこちらを見ている。かわいいというより、不思議な感

じがする。確かに、岩窟で僧が一心に修行する光景に似ている。