「人」

   文字にふれて思うこと……


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   息子が独り立ちしようと東京へ出て行った。
   息子の希望の船出を、親は期待と不安と祈りにこころふるわせ
   見送るのが世の常だろう。
   「立つ」とは、意思をもつ一人前の人間として世にでることをいう。
   「三十にして立つ」という孔子のことばがそれである。
   息子が一人前になるのはもう少しだけ待たなければならないのだろうか。
   それとも、これが「立」ったのだろうか。
   ときが経たねば判らない。
   人生、人間というものは振り返ったとき見えるものらしい。
   人も、人類もしばしば振り返って見た方がよい。
   死ぬ、滅ぶ間際に間違いを知るのはあまりにかなしい。
   振り返らずに終えるものは幸福かも知れないが、
   負債は後に残るものだ。佳かろうが悪かろうが。
   
   「人」という字を、
   結婚式の祝辞などで寄り添い支え合う二人に喩えて言うことが多いが、
   字は人が立つ姿を横から描いたものである。
   つまりは独り立ちの形である。
   息子を送ったいま、敢えて言えば、自立する形である。
   息子はいま「人」になったのかも知れない。
   


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