ぶらぶら・棚田の「畑」 - 上

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        ぶらぶら・棚田の「畑」- 上


   10月17日。久しぶりに「畑」へ出かけた。
   半月ぶりであった。
   稲の刈り獲りもすんだし、花もシーズンが過ぎている。
   これという目的があるわけではなかった。
   ――なにも期待しない方がいい、と自分に言い聞かせて出かけたのだった。
   途中、棚田の「鵜川」で苅田の写真を数枚撮った。

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   「畑」の入り口近くで雑草を撮った。
   いつも耕地を作っている老人は見えなかった。

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   昼飯を摂りに帰っているのであろう。
   秋空は飽くまで青く高く、すがすがしい散策気分であった。
   いつものごとく見谷川沿いを遡っていくと、案の定、これというものはなにもない。
   ゲンノショウコがいっぱい種化していた。色褪せた葛がたまに目につく。
   ツリブネソウがわずか数輪、落ち武者のように残っている。
   ――カラスウリが実をつけているといいのに…。
   林をじっと見つめる。……それもない。
   画にならない写真を撮りながらぶらぶら歩いた。
   「どんどん秋が深まっていくなあ」
   わざと独り言を声にして言ってみる。
   「美しい紅葉をみせろよ」
   辺りを見渡しても、まだまだ紅葉美などかけらもなかった。
   「まあ…ええ。許したろ」


   牛のように歩く。
   撮り飽きたというべき棚田を撮る。

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   ――えらい、柿の木が寂しいなぁ…。

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   田圃のそこかしこに見える柿の木に実がほとんどない。
   「おかしいなあ…?」
   また独り言を言ってみる。
   ミゾソバだけが元気に咲いていた。

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   見谷川につながる小さな溝のような小川のそばで腰を下ろしぼんやり辺りを眺めた。
   ――あんさん…。ほんま、なんにもおへんなあ。
   赤トンボが傍にある梢の先に止まっといる。
   しばし《睨めっこ》をする。
   写真を撮ろうとすると横を向きゃあがった。

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   ――この野郎ッ! 金輪際ゆるさねえからな!
   声は出さなかった。
   少し離れて、市の職員のような若い男がいたからである。
   彼はなにやら田圃を調べて思案気に歩いていた。



   画にしないものを撮るのは辛いものだ。
   それでも時に撮りたいモノに遇う。

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   といっても以前撮ったことがあるものばかりだ。
   格別の変化はない。



   畠には、自宅の食材用だろう。いろんな野菜が植えてある。

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   以前、老人がほうれん草を植えると言って畝を作っていたのを思い出した。
   ――「畑」の産業は何んやろ。
       山独活のほかに目に入るものは……、これといって…ないな。
      米作や山独活以外になにかあってもエエようなもんやけど……。
   ブラブラ、そして
   ぶらぶら時を過ごした。



   垣根に変わった秋桜(?)を見つけた、以前MooNさんがブログに載せていたような。

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   以前ブログに載せた花梨は葉を落として見事になっていた。

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   いよいよ、これという収穫もなく帰ろうとしてバス停近くまでトロトロ戻ってくると、
   「棚田祭り」の案山子がまだ残っていて、
   すぐ下の子供公園では三人の老人がゲートボールをやっている。

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   三人にカメラを向けると

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   「案山子を撮れや」
   と言う。案山子の一つは山内一豊である。
   「槍が倉庫にあるケエ…」
   と今にも取りに行こうとする気配。
   「いいえェ…、案山子は棚田祭りのときに、撮りました…」
   私は大声で急いだ。
   「ほぉケェ…」
   老人が老人の世話をしている。男女二人はまだまだ矍鑠として元気だが
   一人は打つのがやっとで、どうしていいのか解らないという風に
   よぼよぼ歩き、老女の言うままに動いていた。
   そこを離れた私は道路を挟んだ向かいにある薔薇を撮った。

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   これは、「オールド・ブラッシュ」という中国原産の薔薇が
   1800年初頭にヨーロッパに伝わったという古種で、
   アイルランド国立植物園が育苗している苗木6本を高島市が譲り受け、
   株分けしたものである。
   花は素朴。華美さがない。3センチ足らずの小花である。
   薔薇の原種というものがこういう質素なものであったことを教えてくれる。
   原石が美しくないのはダイヤモンドに限らず
   宝玉すべてについていえる。



   坂を下ると、やけに煙が立っている。

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   田圃の干し藁や刈った枯れ草などを焼いているのだ。

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   農夫が高い棚田の急斜面に踏ん張って草を刈っている。

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   半日ほとんどなにもしないうちに時間が経ち、
   陽が、山際近くに傾き始めていた。
   棚田の「畑」はのんびりと、
   だが慌ただしく、季節を迎え、送ろうとしているようだった。

                                   ぶらぶら・棚田の「畑」- 下へつづく

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